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今年度も大学院生のゼミ合宿を行いました。

  • 執筆者の写真: Hayashi Yoichi
    Hayashi Yoichi
  • 2025年12月31日
  • 読了時間: 8分

 

気が付けば,もう今年も最終日。

12月の後半は,毎日卒論の指導で手一杯な日々でした。

 

今年度は,なんだかんだと仕事での拘束時間が長く,情報発信の部分では,アクティビティを上げることができませんでした。

 

そんな状況もあり,ご紹介が大変遅くなってしましましたが,今年度も夏期休暇中にゼミ合宿を行うことができました。



●目次

 


〜今年もゼミ合宿をしました〜

 

 例年は新潟で開催していたゼミ合宿ですが,今年は諸般の事情により初めて都心の本学・市ヶ谷キャンパスでの実施となりました。

 

 都内は現在宿泊費がかなり高騰していることもあり,今回は私の指導する大学院に加えて,OBや学内の他ゼミ所属の大学院生,顔見知りの若手の大学教員を中心に声をかけました。

 用事がある参加者もいて多少の出入りもありましたが,メタアナリシスの手順を学びながら一緒に作業を進めた時間はとても充実したものになりました。

 

 学会などが主催する合宿形式のセミナーでも分析方法や論文執筆について学ぶ機会はありますが,気心の知れたメンバーと落ち着いてじっくり取り組めるのはまた別の魅力,気楽さがあると感じています。


 

 そもそもこのゼミ合宿は,「Paper-in-a-Day Approach」

「論理展開を丁寧に議論してみよう」

という目的を持って始めた取り組みです。


 コロナ禍を経て,今年度でもう5、6回開催していると思いますが,初年度は学部4年生や修士課程の学生が中心で,作業のイメージがうまく共有できなかったためか,正直なところ,不完全燃焼な部分もありました。


それが,回を重ねて複数回参加してくれる院生が増えてくるにつれて,作業がスムーズに進むようになってきたと感じています。

 


 上級生の院生に関しては,論文を書く苦労や工夫を経験してきたことが,ゼミ合宿での作業のイメージを共有できるようになった大きな要因であるとも感じています。

 他方,論文執筆の中で何度も試行錯誤を重ねるうちに,「どこが大事か」を体験的に理解し,それを共有できるようになってきたことも上手く作業が進むようになった要因だと思っています。

 

 こういう経験からも,「経験」は作業のイメージを理解する大事なものであり,知識や技術を支える大きな要素なのだと改めて感じています。


 


〜世界陸上の観戦から感じた体験の格差〜

 

 今回の合宿期間中には,ちょうど世界陸上が開催されており,大学の目の前がマラソンコースになっていました。

 ゼミ合宿二日目の朝は女子マラソン,三日目の朝は男子マラソンを,参加者みんなで沿道から応援しました。


 

 首都圏にいると,こうした国際的なイベントの開催も多く,比較的容易にアクセスもできますが,地方では必ずしもそうではありません。

 

 最近では,こうした「体験の格差」が教育や文化の分野にも影響していると指摘されることが増えていますが,今回参加してくれたメンバーからの「テレビの中のイベントを,こんな簡単に観れるとは思いませんでした」というコメントからも,格差の存在を感じました。

 

 

 私自身,生まれてから大学まで福島県で過ごしました。

 当時,「スポーツに関する情報源」といえば新聞や雑誌,テレビでしたが,野球中継はジャイアンツ戦ばかりでした。

 特にファンでもなかったのですが,繰り返し見ていたことで,ジャイアンツの打線だけは覚えていました(1番:松本,2番:篠塚,3番:クロマティ,笑)。

 

 小学校と中学校ではサッカー部に入部しましたが,映像でサッカーの試合を視たのは年末年始の「高校サッカー(福島代表の試合と決勝のみ)」か「天皇杯決勝」,「トヨタカップ」ぐらいしか記憶にありません。

 サッカーのルールや用語は,ほとんど『キャプテン翼』で覚えたと言っても過言ではありません(笑)。

 

 現在,サッカーであれば日本代表の試合は殆どテレビで中継されますし,サブスクを契約すればJリーグだけでなく世界中のリーグの試合をいつでも視ることができます。

 インターネットを繋げば,試合だけではなく,編集して有名選手の細かなテクニックを集めた動画,様々なトレーニング方法が紹介された動画を視ることも可能です。

 

 そして何より,指導者資格が整備され,そういった資格を有した指導者が日本各地で指導を行っており,国内であれば少なくとも方法論的な普及において地域格差はほぼないのではないかと予想されます。

 

 もちろん,方法論を身につけたから優秀な選手が育成できるという訳ではなく,各指導者が行う実際の指導自体が選手育成においては非常に大きな影響を及ぼすとは思います。

 ただ,確立されている指導方法が普及していることは,地域による格差の縮小にかなり貢献しているのではないでしょうか。

  

 

  

〜研究における「環境」と「経験」の格差〜

 

 研究の世界でも,「情報へのアクセス」という点では地域格差はずいぶん減っていると感じています。

 私が大学・大学院生の頃は,図書館にない論文はなかなか読むことができず,海外の著者にリプリントを送って欲しいと手紙を書いたこともありました。

今では世界中の論文をオンラインで読むことができます。

 

 それでも,「環境」や「経験」における格差は,まだまだ存在しているように感じます。

 

 私は大学院時代、とても恵まれた環境で研究活動をすることができました。

 大学院に入学して,初めて運動負荷テストを見たとき,学部時代に自分で行っていた実験では気づけなかった細かな配慮や工夫に感嘆しました。

 

 また,運動処方の実践現場に参加したときも,マニュアルには書かれていない声かけや配慮の仕方など,多くの経験を経た研究室ならではの,数多くの細かな配慮に感動しました。

 

 もちろん,どんな環境でも経験を積む中で自然に「気づき」を得られる人はいます。

それでも,「百聞は一見に如かず」です。

 実際に見る,触れる,体験することの力はやはり大きいと感じます。

 

 

 以前,優れた研究成果を多く出している研究室を見学した際に,設備の多くが自作で,とても素朴な環境で実験を行っていたことに驚いたことがあります。

 

 けれど同時に,「これでも研究は十分に成立するんだ」というということに気づかされました。

 その気づき・経験は,自分の研究観を見つめ直す大きなきっかけになったと思っています。

 

 

  

〜「外へ出て行くこと」の重要性〜

 

 しかし,こうした様々な経験や発見を経て現在に至っても,自分は「優れた指導者」になれたとは思うことができません。

 

 謙遜ではありません。


 むしろ「大学教員として」,「研究者として」,他の先生方に比べて至らない点の多さを痛感しています。

 私が担当している大学院のゼミ(多摩キャンパス)の環境も,立地や設備の面で決して恵まれているとは言えません。

 

 それでも、院生たちに提供できることの一つとして,人的なつながりを活かし,他大学の研究室や院生との交流の機会をつくるようにしています。

 そうした交流を通じて,普段とは違う研究のやり方や考え方に触れることができれば,それも大きな学びになると思います。

 

 「そんな指導は他人任せなのでは?」と言われれば確かにそうかもしれません。

 

 しかし,大学院生が自分自身や指導教員とは異なる考え方や知識に触れ,それを踏まえて自分のやり方を更新していく柔軟さを育てることも大事な研究指導なのではないか,と最近は考えています。

 


 所属の異なる人たちと活動することで,自分たちの取り組みが他の人に新しい刺激を与えることもあります。

 

 今夏のゼミ合宿では,分析手順や論文構成についての議論を通じて,他大学の院生から「こういう話し合いは初めて行った」と言ってもらえました。

 


 私たちにとってはいつものやり方でも,それが他の人にとって新鮮な経験になる…そんな相互作用が,研究の広がりを生むこともあると思います。

 

 また,教科書に載っているような情報については,知識としては知っていても,実際に手を動かしてみる(作業を体験する)ことで初めて実感できることがあります。

 そうした「体験」を共有することの大切さも,今回あらためて感じました。

 

 これまでに開催した過去の合宿に参加してくれた院生のすべてが順調に研究を進めているわけではありません。

 しかし,ゼミ合宿を通して私たちの取り組みが誰かにとって新しい「学び」や「経験」になっているのなら,それだけで十分な意味があるのではないでしょうか。

 

 私のゼミの大学院生たちを見ていると,異なる環境や視点に触れることで確実に成長していると感じます。

 

  

 

〜内に閉じない姿勢を大切に〜

 

 今年の合宿は,世界陸上の開催や都内での実施など,いつもとは異なる条件が重なりましたが,私自身にとっても,合宿形式で直接顔を合わせながら学ぶことの意義や,研究環境が与える影響の大きさを再認識する機会になりました。

 

 そして,改めて感じたのは「地域格差」や「経験格差」は、どうしても存在してしまうということです。

 

 しかしながら,それを埋めることは不可能でないということもまた確認できました。


 一人ひとりが積極的に外へ出て行き,異なる人や環境,分野に触れることで,少しずつでも格差を縮められる可能性はあると思います。

 これからも,「内に閉じない」姿勢を大切にしながら,自分自身が仲間とともに新しい経験を積み重ねていくつもりですし,大学院生にもそのような指導をしていきたいと考えています。

 

 

 私の外的な評価は芳しくないと認識していますが(苦笑),うちの大学院生達が,多くの先生方や他大学の大学院生との交流から多くの事を学んでくれれば,「君は林ゼミ出身なのに優秀だね」と評価して頂けるのではないかと思っています。




 
 
 

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